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緑を資源として 循環させるための 未来につながる試験圃場
有限会社ミドリ企画 企画開発部長 尾形 謙さん
Interview

新たなまちづくり計画が進む南蒲生地区の一画で、リサイクル緑化資材を活用した試験事業が2024年5月から開始されました。事業を進めるのは、造園緑化・土木工事の設計施工会社「有限会社ミドリ企画」。同社は東日本大震災の後3年間、仙台市の集団移転跡地整備事業を通じて、除草等維持管理業務を担ってきました。その他、仙台東部地域のみどりの再生を目指す「ふるさとの杜再生プロジェクト」の植樹や育樹会などの活動にも参加。企画開発部長の尾形謙さんに今回の試験事業の経緯や内容、今後の展望について伺いました。

リサイクル緑化資材を活用し
将来性のある緑化づくりに貢献

東日本大震災以降、ミドリ企画は仙台市集団移転跡地の除草や維持管理の他に、井土地区の海岸公園避難の丘整備工事、芝生復旧や若林シーサイドマラソン駐車場整備業務、海岸防災林の植樹などにも携わってきた。
「活動を通じて仙台市東部沿岸部の現状を知ると同時に、多くの地域住民の方々と交流を持つことができました。岡田地域(南蒲生、新浜地区)の町内会では、まちを盛り上げようとさまざまなイベントを開催しています。そうした活動の一助になることを考え、色とりどりの草花や樹木でまち並みを彩れば、訪れる人たちが明るい気持ちになるのではと思いました」と尾形さんは利活用事業に応募したきっかけを振り返る。

しかし、なぜ緑化事業に試験圃場が必要なのか。
試験に使われるのは「ネオソイルMS」という有機質土壌改良材と、仙台市内の公園・街路樹の剪定枝葉ウッドチップ。ネオソイルMSはミドリ企画によって1987年に技術開発され、公共工事の造園緑化を中心に多くの事業に提供されてきた。1993年にネオソイルMSを活用し造成された仙台港緩衝緑地では、東日本大震災の津波で被災した植栽木が流失せずに健全な形で残っていたという。
「ネオソイルMSは、土木・建設工事や林業生産の現場から発生する伐採木や除根、樹皮などの粉砕チップに脱水汚泥を混合し、発酵堆肥化させた緑化基盤材です。このネオソイルMSを活用することで、将来性のある緑化づくりに貢献できると積極的に提案を行ってきました」。

樹木や草花などのさまざまな
生育試験を実施しデータをとる

南蒲生地区の試験圃場では現在、ネオソイルMSを用いた樹木・芝生の生育試験や、再生資源土木資材を用いた雑草繁茂抑制試験などが実施されている。実際に行われている試験施工としては、『コスト削減工法を用いたスポーツターフ(天然芝舗装)試験』『雑草を活かした環境対策効果試験』『温暖化対策型植栽基盤材改善試験』などがある。
「数種類の芝生を並べて、植栽基盤材の厚さや分量を変えたりして芝の状況を見比べられるようにしています。他にも、シラカシという木を植えて根っこの周りに肥料を入れ、どのくらいの分量で肥料を入れればどんな育ち方をするのかを調べたりしています。さらに、雑草を残した場合と刈り取った場合でどう違うか。雑草が風よけの役目をするので、木がある程度育つまでは残しておいた方が良い場合もあるんですよ」と尾形さんは説明する。

ミドリ企画は、日本リサイクル緑化協会東北支部に所属している。協会員は造園事業者や法面保護緑化事業者と、リサイクル緑化基盤材の生産者で構成されており、環境負荷の少ない持続可能な資源循環型社会の担い手として、地域環境の保全に貢献できるよう活動することを理念とする。南蒲生地区の試験圃場はその活動の一つでもあるのだ。地域の緑化活動に終始することなく、試験で得られたデータやノウハウを活かして、広く地域貢献することを目指している。

試験を継続しながら
販路と地域貢献の拡大を目指す

事業開始から約4カ月。「1年目はリサイクル資材活用試験期間と考えています。半年から3年目の間に試験栽培した植物の販売や、野菜の栽培試験にネオソイルMSの提供ができるようにしていきたいですね。さらに3年目から20年の間には、試験を継続しながら元気な樹木や草花を栽培し、露地栽培で道路周辺を彩り明るさを演出したり、試験のデータをもとに周辺地域にリサイクル緑化資材の活用提案や、観光資源への活用を行えればと思います」と今後の展開について話す。

しかし、この事業は生育試験のため生長に時間がかかり、利活用事業を行っている場所にお客さまが訪れるようになるまでには少し時間を要する。
「海浜エリアを訪れる方々に楽しんでもらえるように、宮城野区海岸公園へ通じる道路の脇にプランターを置いたり、仮囲いに絵を描いたりすることも考えています」。
町内会の環境美化や植樹会などのボランティア活動、イベントに協力するのも楽しめる地域にしたいという思いからだ。

仙台市の「ふるさとの杜再生プロジェクト」にも参加しているミドリ企画。「プロジェクトのエリアになっている貞山運河周辺の地域のイベントへの協力や、東部沿岸部の緑の再生、地域の環境美化活動などを続け、常時は市民県民の方々が楽しめる場所、災害時は減災に役立つグリーンインフラの整備に貢献できるように努めていきたい」と尾形さん。
緑を資源とする未来へつなぐ取り組みは始まったばかりだ。

有限会社ミドリ企画
企画開発部長
尾形 謙さん

仙台市出身。石油精製業、鍼灸接骨院の院長を経て、令和元年「有限会社ミドリ企画」に入社。企画開発部にて、リサイクル緑化資材の研究開発や造園緑化関係の施工管理を行っている。

http://www.midori-plan.co.jp/

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