Special 特集

つながりから⽣まれる、
集いの海辺未来へつなぐ、ひと。

深沼の記憶を 訪れた人たちとともに 未来につなげる
深沼うみのひろば 今野不動産株式会社 代表取締役 今野 幸輝さん
Interview

仙台市若林区荒浜の深沼海岸。東日本大震災以前は約800世帯の集落が海辺まで広がり、市内唯一の海水浴場として市民にとって馴染みの深い場所でした。この「深沼」にかつての賑わいを取り戻す事業の一環として、多世代交流拠点「深沼うみのひろば」が2023年10月にオープン。プロジェクトの中心となり活動している、今野不動産株式会社代表の今野幸輝さんにお話を伺いました。

思い出の場所「深沼」に
賑わいを取り戻す

海辺に広がる「深沼」の集落は、街の中を流れる川と海に挟まれ、半農半漁の暮らしが営まれていたという。燃料になる松の葉を集める「松葉さらい」、餅や漬物を振る舞う節目の行事など地域住民が共同で作業を行い、「よ(結)いっこ」という文化が育まれ、地域に根ざしていた。

「昔はこの辺りのお母さんたちが、リヤカーを引いて市街地の方に野菜を売りに来ていたんですよ。海水浴シーズンはたくさんの海の家が立ち並び、子どもたちがスイカ割りをしたり、海で泳いだりしていましたね。知る人ぞ知るサーフポイントで、私を含めて地元サーファーたちの人気スポットでもありました」と今野幸輝さんは懐かしそうに話す。

今野不動産は1965年に創業した仙台市青葉区大町に本社を置く不動産会社。今野さんは3代目だ。
「今野家は伊達政宗公が築城する際に、城下の町割を任された家系なんです。祖父の代には戦争で焼け野原となった仙台市の再開発事業に携わりました。大町はかつて『肴町』と呼ばれた界隈。戦前まで魚の市が立った場所で、荒浜や深沼からも行商に訪れていたそうです」

古くから今野家と縁のある「深沼」は、今野さんにとっても慣れ親しんだ場所である。元住民の友人から、「仙台市が集落の跡地を新たな魅力創出の場とするための事業者を募集しているから参加しないか」と声を掛けられた今野さんは、2017年、復興への強い想いを抱いていたことから事業に応募。今野不動産が提案した「深沼うみのひろば」プロジェクトは「仙台市防災集団移転跡地利活用事業」の事業者に決定し、国土交通省より「住まい環境整備モデル事業」に採択され、事業を進めている。

他業種や大学との連携で
アイデアが広がる

「『深沼うみのひろば』プロジェクトは協議会を立ち上げ、その中で、子育て世帯や高齢者、障がいの有無に関わらず多様な人たちが憩うことのできる、インクルーシブパークとして整備する方向でまとまったんです。イベント広場やコミュニティファームなども展開します」と今野さん。

2023年10月にオープンしたのは「深沼うみのひろば」の中核となる交流施設だ。施設内にはカフェ、コワーキングスペースなどが整備されている。1階にはデジタルサイネージがあり防災情報などが自動配信される。
プロジェクトのコンセプトは『土と、水と、風と、遊ぶ。そして、子どもも大人も輝きだす。』。多様な人たちが自分らしく過ごせるインクルーシブな居場所づくり、荒浜・深沼にかつての賑わいを取り戻す、震災の記憶の継承と防災・減災について学べる施設となることを目指している。

プロジェクトは今野不動産だけでなく、業種の異なる企業や大学などが参画してアイデアを出し合いながら進められた。
「施設のデザインやプランニングなどトータル的な部分は乃村工藝社さんにお願いしました。震災の記憶の継承に向けて、荒浜・深沼の震災時や復興過程のドローン映像をVRゴーグルで視聴できる環境の整備はNTT東日本さんにご協力頂きました。映像は防災・減災学習のコンテンツを含めて東北福祉大学さんに監修いただきました。また、NTT東日本さんからは、親子が安心して「深沼うみのひろば」で過ごせるように、体温や転倒検知、位置情報などが確認できるウェアラブル端末とスマートフォンの貸出しを行う提案を受け、子どもの見守りにつなげています」

未来につなぐ交流の場
「深沼うみのひろば」への想い

「深沼うみのひろば」はオープン後、県外の小学校や高校の修学旅行生などを受け入れ、防災・減災学習の場としてプログラムを提供してきた。

「九州からも来てくれました。実際に被災地を訪れ、映像を視聴し体験することで防災や減災への関心を深めてくれると嬉しいですね。VR映像のラストは非常にこだわった部分で、『未来』に希望を持てるような締め方にしているんです」
学習はカフェ&コワーキングスペースを利用して行われた。今後、施設の周辺には、インクルーシブ公園をはじめ、バーベキューサイトやイベント広場、ファームなどが整備される予定だ。2期工事を控えた現在、見えている課題は、自走できるように運営していくこと。

「施設の利用には有料の部分もあります。カフェの営業はこれからスタートします。そういう意味では『深沼うみのひろば』は現在進行形の施設です。それでもここに来れば海があり、休憩できる場所があり、思い出を共有できる人に会える。深沼に住んでいた人たちはもちろん、いろんな方に利用していただき、思い出話や未来について語れる施設にしていきたいですね」
プロジェクトへの想いを語る今野さん。「深沼」にかつての賑わいを取り戻す復興事業はこれからも続く。

深沼うみのひろば
今野不動産株式会社 代表取締役
今野 幸輝さん

東日本大震災において、応急借上げ住宅(みなし仮設住宅)の制度構築や推進をはじめ、広島土砂災害(2014年8月)、熊本地震(2016年4月)、大阪北部地震(2018年6月)、西日本豪雨(同7月)、北海道胆振東部地震(同9月)、東日本台風(2019年10月)、豪雨水害(2020年7月)等において、発災直後に被災地に赴き、陣頭指揮を取って被災自治体や現地関係者と連携を図りながら被災者の住まい確保に奮闘してきた。こうした取り組みにより防災功労者として、2012年2月に宮城県知事、同7月に国土交通大臣、2017年9月に防災担当大臣、2020年9月には内閣総理大臣から感謝状・表彰状が授与されている。

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