つながりから⽣まれる、
集いの海辺未来へつなぐ、ひと。
仙台市荒浜地区にまた一つ、賑わいを創出する施設が2024年4月に誕生しました。レストラン併設のバーベキュー施設「Garden kitchen海と風」。運営するのは、東日本大震災後に荒浜の瓦れき撤去などを担った仙台の解体工事会社です。被災地となった沿岸部に再び活気を呼ぶため、3年かけて準備をしてきました。完成したのは新たなスタイルの全天候型バーベキュー施設。施設支配人の渋谷靖一さんに開業の経緯や今後の展開などについて伺いました。
沿岸部に新たな魅力が
生まれるきっかけを作る
「もともと知り合いだった運営会社の会長から、一緒に新しい施設を作らないかと声を掛けられたことが、事業に関わるきっかけでした。私自身は社員ではなく、飲食業界で働いた経験はありましたが、当時は別の業界に勤務していたので少し驚きましたね」。
渋谷さんは、何もない所に一から作り上げることへの興味から、事業への参加を決めたという。会社が仙台市の利活用事業に応募した事業内容は、気軽に農・食・遊を体験でき、手ぶらで楽しめる全天候型バーベキュー施設、カフェ、市民農園。
「気軽さと、手ぶらで楽しめるという部分で、先行するバーベキュー場との差別化を図りました。それこそ沖縄の方まで全国のバーベキュー施設を会長と見て回りましたね。建物の造りは、会長のデザインをもとに、東北工業大学の先生や造園会社などに協力いただきました」。
手ぶらで楽しめる
バーベキュー施設を
「Garden kitchen海と風」は、37のバーベキューサイトがあり、そのうち30サイトは垣根で囲われた空間となっている。冷暖房と冷蔵庫を備えたプライベートロッジ、個室付きのプライベートルーム、西洋風の東屋のあるプライベートガゼボ、庭のようなプライベートフィールドなど、さまざまなスタイルでバーベキューを体験できる。
「本格的なキャンプが好きな人には物足りないかもしれませんが、道具がなくてもできる手軽さや気軽さは、アウトドアに慣れてない人にとって魅力的だと思います。また、ロッジとルームはエアコン完備ですので、小さいお子さんが一緒の際は熱中症の心配が軽減されます」
市街地に近い場所のホッとひと息つける非日常の空間で、心温まるバーベキュー体験を提供することは、全国の施設を訪れた渋谷さんとオーナーのこだわりの一つだった。
また、サイト敷地にはピザ窯を設置し、ピザ作り体験もできるようにした。
「自分たちで生地を延ばすところから作るのと、出来上がった生地に具材をトッピングして完成させる二つのコースがあります。窯に入れて2分くらいで焼き上がります。お子さんたちには、ぜひ窯から焼き上がったピザを取り出す体験をしてほしいですね」
「Garden kitchen海と風」がもう一つ力を入れているのが食材である。
「バーベキューというと、料理の味より雰囲気を楽しむのがメインになるところがありますよね。海と風では雰囲気はもちろん、国産肉と地元で採れた旬の野菜や自家栽培の野菜などを中心に提供しています。レストラン併設ですので、追加で料理もご注文いただけます」
バーベキューをせずに、カフェレストランだけの利用ももちろん可能だ。サイトエリアに行く時に通る建物は高い天井に大きな窓が開放的で、整備された庭にはテラス席が設けてある。料理はビーフカツやローストビーフ、スパイスチキン、テリヤキバーグの4種類のバケットサンドの他、2種類のライスメニューがある。渋谷さんおすすめの「ジャークチキンボウル」は、ジャマイカ人のシェフが作る本場の屋台料理をアレンジした一品で、ホットペッパーソースをかけていただく。バターライスとの相性が良く、辛くないので子どもにも喜ばれそうだ。
住民の方々の思いを受け止め
賑わいを創出する交流の場へ
4月にオープンしてから4カ月。営業してきたことで見えてきた課題もある。
「カフェレストランの方向性がまだ手探り状態ですね。現在は肉料理がメインですが他の料理も充実させるべきかどうか、カフェのデザートをもう少し増やした方がいいか…。今のところ、お客さまの年齢層がやや高めなので肉以外も用意した方が良いかもしれないですしね。もうしばらく現在の形で続けて考えていこうと思います」と渋谷さん。
荒浜地区にある「深沼海水浴場」は今年、東日本大震災以降14年ぶりに海開きした。市内唯一の海水浴場だけに市民はもちろん、近県からも海水浴客が訪れたという。「Garden kitchen海と風」を含む沿岸部の各施設は、協働で地元を盛り上げた。
「海水浴場があることは荒浜地区の大きな魅力です。今後もさまざまな形で盛り上げていきたいですね。カフェレストランでは、ライブイベントやパーティーなども予定しています。事業の一つである市民農園(貸農園)は現在準備中ですが、開園したら前に住まわれていた方や地元の方々にもぜひ利用していただきたい。それこそが貸農園を提案した理由の一つです」
荒浜にひと時滞在して、心地よい時間を過ごす。その過ごし方の選択が増えることで、沿岸部は少しずつ賑わいを取り戻している。
Garden kitchen海と風
支配人
渋谷 靖一さん
仙台市出身。飲食業界や給食事業を展開する会社などを経て、知り合いだった東北黒沢建設工業(株)会長の誘いを受け「Garden kitchen海と風」の支配人となる。
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