Special 特集

つながりから生まれる、
集いの海辺未来へつなぐ、ひと。

サーフィンに夢中だった 少年の頃から慣れ親しんだ 海辺の景色を取り戻すために
深沼海水浴場運営協議会 会長 今野 幸輝さん 副会長 村川 琢哉さん 幹事 末永 薫さん
Interview

2024年の海の日、試行的ながら14年ぶりに海水浴場の再開を果たした深沼海水浴場。さらにその翌年、津波の際の避難対策が完了したことで入場制限無しのオープンが実現し、前年を遥かに超える来場者数で大いに賑わいました。運営に携わったのは、荒浜地区の元住民や仙台市集団移転跡地利活用事業者で構成する深沼海水浴場運営協議会。会長を務める今野幸輝さんは、10代の頃からサーフィンを楽しむため深沼へ足繁く通った一人で、副会長の村川琢哉さんと幹事の末永 薫さんも、サーフィンを通じて交友を深めてきた仲間です。

3人のサーファーが手を取り合い
荒浜エリアに新たな賑わいを創出

災害危険地域に指定され、防災集団移転促進事業の対象となった荒浜地区。安全な内陸への移転を目指し、末永さんは荒浜移転まちづくり協議会の代表として奔走していました。そんな中、「協議会の活動で付き合いを深めた仙台市の職員から、仙台市集団移転跡地利活用事業への応募を勧められました」と当時を振り返る末永さん。そこで、サーフィン仲間の村川さんと一緒に合わせて0.6ヘクタールの土地を借りて、共同農園の立ち上げに着手。末永さんは「ファーム・SURF-SIDE荒浜」として、村川さんも社名と同じ「GARDEN」の園名で賑わいの創出を目指しました。その後、盟友の今野さんにも応募を勧め、今野不動産として提案した「深沼うみのひろば」プロジェクトにより利活用事業の事業者として選定。クラブハウスを中核にした都市型アウトドア拠点が誕生しました。
集団移転跡地利活用事業の参加をきっかけに3人は毎週末集まるようになり、かつて地元で親しまれていた深沼海水浴場を復活させたいという話題で盛り上がりました。「震災直後に荒浜へ駆けつけ、その惨状を目の当たりにして唖然となってしまいましたが、それでも、私たちが長くサーフィンを楽しんできた深沼を復興させたいと強く願いました」と今野さん。その悲願を叶えるため仙台市の担当者らと連絡を重ね、2024年に仙台市の主催による海開きの開催が決定。海水浴場内の滞留人数を最大800人に制限しながら、延べ30日間で1万4285人もの海水浴客を集めました。それを受けて2025年、元町内会長や海岸公園センターハウスの関係者たちで意気投合し、深沼海水浴場運営協議会を設立。15年ぶりの本格的な海開きを主催し、前年をはるかに超える大盛況となりました。

万全の安全対策と砂浜清掃を実施しながら
夕暮れ以降も楽しい海水浴場を実現

地元の海の楽しみを熟知している顔ぶれだからこそ、海水浴場を盛り上げるアイデアは尽きなかったそうだ。昼間の遊泳時間は朝9時から夕方4時までだが、夜もビーチカフェ&バーでフードやドリンクを提供したところ大盛況。来場者が花火を持ち寄って楽しめるエリアも設けた。末永さんが熱望し、ポンプで汲み上げた井戸水を砂浜に循環させた小さな子ども向けの遊び場を作ったところ、たくさんの家族連れに喜んでもらえたという。「報道発表では、利用者数は約2万8000人と報じられたようですが、夕方以降の来場者をカウントすると3万4000人に達すると思います」と、今野さんは自信に満ちあふれた笑顔で語る。
安全面の強化も集客の成功につながったようだ。ライフセーバーの資格取得を呼びかけ、協議会メンバーでは末永さんと村川さんが6日間の講習を受け、試験に合格。ビーチパトロールを念入りに行い、事故ゼロを達成することができた。砂浜の整備やゴミ拾いなども定期的に実施し、イメージアップも図った。
今野さんに、オープン期間中の印象的な出来事を聞くと、「海水浴に来た子どもたちが裸足で砂浜を歩いた時、あまりの熱さで驚いていた光景を何度も目にしました。それで、震災、コロナ禍のために真夏の砂浜をまったく経験していない子どもがいることに初めて気付かされました。海の塩辛さを初体験した子どももいたようです。そんな新鮮な経験を与えられたことも、大きな成果だと思っています」と話してくれた。

訪れる度に新たな楽しみが増える
活気あふれるビーチタウンを

深沼海水浴場本格オープンの成功は、3人にとってさらなる前進の原動力になっているようだ。「震災から10年を節目に、元住民やサーファーたちがこの地域に足を運ぶ頻度が高くなっています。そんな状況で海水浴場の本格オープンを迎えられたことは、新たな展開への手応えとなりました。だからこそ、この地域に続々と新鮮な楽しみが生まれていることを、より広くアピールしていきたいですね」と、村川さんは意欲を燃やす。
荒浜地区における他の防災集団移転跡地利活用事業者と連携する必要性も、強く感じているという。例えば、海水浴客用の駐車場料金に500円分の地域共通クーポンを付与して、エリア内での回遊性を図るといったアイデアを採用し、地域全体で盛り上げていくのが目的だ。
今野さんは「深沼うみのひろば」からほど近くに、新規で1万6000坪の用地の借用契約を結んでおり、活用に向けていろいろと構想を練っているところだという。敷地の広さを生かせるドライブインシアターなど次々と発想が湧き出し、3人の夢は尽きない。「若い頃、サーフィンが面白かったのは言うまでもないんですが、実はひと夏のロマンスに淡い期待をして深沼に通っていたことを思い出しました。現代の若者たちにとっても、そんな心が高鳴る素敵な場所となるように、魅力的な施設や企画を生み出していければと考えています」と、悪戯めかした笑顔で結んでくれた。

 

深沼海水浴場運営協議会
会長 今野 幸輝さん

今野不動産株式会社代表取締役で、2023年10月にオープンした多世代交流拠点「深沼うみのひろば」のプロジェクトに取り組む。
詳しいプロフィールは過去の記事(https://gurutto-uminote.com/special/6/)を参照。

副会長 村川 琢哉さん

株式会社GARDEN代表取締役。地域に密着したICT、IoT企業として電気通信事業に携わりながら市民農園も開設。収穫祭や夏祭り、サーフィン・カヌー体験なども企画・実施している。

幹事 末永 薫さん

元荒浜住民が関わりながら作り上げる市民農園、ファーム・SURF-SIDE荒浜の代表。誰もが気軽に荒浜を訪れる場所を設け、盛んに交流できる賑わいの場の提供を目指している。

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