つながりから⽣まれる、
集いの海辺未来へつなぐ、ひと。
2019年に誕⽣した「かわまちてらす閖上」は、震災で⼤きな被害を受けた閖上地区の新たなランドマークとして注⽬を浴びています。宮城県内外から集まった多彩な出店者が、海産物から名取のソウルフード、スイーツまで幅広い商品を提供しており、地域のにぎわいを創出しています。今回、「かわまちてらす閖上」の建設計画から携わってきた常務取締役である松野⽔緒さんにお話を伺いました。
にぎわいを取り戻す
再建への志
⼩さな住宅が密集し、古くから漁師町として活気に満ちていた震災前の閖上地区。当時は5000⼈以上の住⺠がおり、住⺠だけでなく地域外の⼈々からも親しまれ、多くの⼈で賑わう「ゆりあげ港朝市」も開催されていた。しかし、2011年の東⽇本⼤震災でこの地域は多くの家や建物が流されるなど甚⼤な被害を受け、住⺠は⼀時的に住み慣れた⼟地を離れなければならない状況に直⾯した。
県内外に10店舗ある飲⾷店「⾶梅」の代表取締役社⻑として事業を営んでいる松野さんは、震災直後から炊き出しや⾷事の提供などの⽀援活動に尽⼒した。「仙台市⺠にとって閖上地区は⾝近で親しみやすい場所であり、私⾃⾝も⼤好きな場所です。何か⼒になりたいと震災直後から思っていました」と松野さんは振り返る。地域に密着した飲⾷業のノウハウを活かし、地元の再⽣に貢献したいという強い思いが原動⼒となった。
復興のために⾃分ができることはないかと模索する中で、2012年に名取市閖上地区で被災地活⽤のためのビジネスプラン公募が⾏われることを知る。松野さんは飲⾷業として応募し、その年に採択された。しかし、優先的に進められていたのは住宅の再建であり、商業に関する計画はなかなか進まないまま。また、再建を巡って市内でも意⾒の対⽴があり、進展が⾒られない状況が4年ほど続いたという。ようやく商業の再建計画が本格的に議論されるようになったのは2016年ごろ。同時期に国交省の「かわまちづくり」プロジェクトが浮上し、その中で名取川の堤防に商業施設をつくる話が進められた。ビジネスプラン公募での実績もあった松野さんは、商業施設建設の計画段階から参加し、事業者主導での再建へと歩みを進めることとなった。
ロゴマークと
施設名に込めた願い
名取川の堤防に沿う松並⽊は、「あんどん松」として親しまれ、その樹齢は200年を超える。昔は⾏燈をさげて灯台として利⽤されたと伝えられており、震災の津波にも耐え、今もその姿を保っている。松野さんは「『あんどん松』のように街を照らしていけるような施設にしていきたい」という思いを込め、閖上地区の新たなランドマークに「かわまちてらす閖上」という名前を付けた。てらすは〈テラス〉と〈照らす〉の2つの意味にとれるようひらがな表記に。ロゴマークには「あんどん松」、名取川、太平洋が描かれている。
2019年にオープンした「かわまちてらす閖上」は、当初は地元の⼈向けのイベントも開催されていたが、直後のコロナ禍により1周年記念のイベントが制限を受けるなど苦しい状況が続いた。しかし2023年に⼊り、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移⾏されたことでイベントの開催が本格化。最初は松野さんが中⼼となって企画・実⾏していたイベントも、テナント主体のものが増え、5年かけて施設全体としての団結が⽣まれてきたという。「ゆっくりだけど、順調に歩みを進められたと思います」と松野さんは話す。
観光客にも地元の⼈にも愛される
施設を⽬指して
「おかげさまでオープン以来たくさんのお客様にご来場いただき、観光地として宮城県の中では知名度は上がってきているのかなと思いながらも、地元の⽅たちが近くで気軽に買い物できるという需要には応えきれていないように感じます。コロナ禍の影響で地元の⽅たちとの交流が⼀度滞ってしまった部分もありますが、今後も地元の⽅向けのイベントを積極的に⾏って交流を図り、幅広いお客様に使いやすい施設にしていきたいですね」と松野さん。
また、閖上地区は「かわまちてらす閖上」以外にも、周辺に他の施設が点在している。「各施設とも連携し、1つの点としてではなく、⾯として観光客を獲得したい。施設同⼠の連携をさらに深め、観光地として閖上地区をもっと盛り上げていけたら」と展望を語る。
他にも、松野さんはインバウンド観光の活⽤にも注⽬しており、今後は遠⽅や海外からの観光客を誘致する⽅法や、施設の受け⼊れ態勢の整え⽅などを模索していく予定だという。
「かわまちてらす閖上」は、今や閖上地区にとって⽋かせない存在となりつつある。今後のさらなる発展を⽬指し、松野さんを含めた「かわまちてらす閖上」の事業者たちの奮闘は続いていく。
「かわまちてらす閖上」常務取締役
株式会社 飛梅 代表取締役社長
松野 水緒さん
宮城県仙台市⽣まれ。宮城県・東京都で飲⾷店を複数経営している知識や集客のノウハウを活かし、商業施設「かわまちてらす閖上」の運営に尽⼒している。
ほかのインタビューを読む
-
井土まちづくり推進協議会 大友 新さん 三浦 聡一さん 外部サポーター 田澤 紘子さんふるさとを想う住民と 地域を守りたい第三者による アイデアに満ちたまちづくり
-
-
有限会社ミドリ企画 企画開発部長 尾形 謙さん緑を資源として 循環させるための 未来につながる試験圃場
-
Garden kitchen海と風 支配人 渋谷 靖一さん荒浜地区を 人と地域をつなぐ 新たな賑わいと交流の場に
-
海岸公園馬術場 所長代行 中口 和哉さん馬との触れ合いを もっと多くの人に 届けるために。