つながりから⽣まれる、
集いの海辺未来へつなぐ、ひと。
仙台海⼿(うみのて)ネットワークは、仙台東部沿岸エリアの交流施設の運営者等が相互の情報共有や誘客・回遊など検討を通じて、エリアの価値を⾼めることを⽬的として2019年に発⾜しました。その活動の輪はどんどん拡がり、現在では海岸公園や観光交流施設、商業施設、⾏政など、様々な⽴場の有志が集い、連携しながら沿岸エリアを盛り上げています。各種取り組みのコーディネーター的役割を担う榊原さんに話を伺いました
震災前から構想していた
仙台海手リゾートエリア
地下鉄東⻄線荒井駅を⽞関⼝として南北約12kmに伸びる海浜・⽥園地帯。2011年、東⽇本⼤震災の津波で甚⼤な被害を受けたこの仙台東部沿岸エリアは「仙台海⼿」と呼ばれている。震災前から荒井東地区で⼟地区画整理事業をきっかけにまちづくりに携わってきた榊原さんは、現在は荒井タウンマネジメントの理事・事務局⻑を務め、仙台海⼿ネットワークの事務局⻑として、参画する企業や⾏政との橋渡しのような役割を担っている。そもそも「仙台海⼿」という⾔葉は、榊原さんの師である故・⼤村虔⼀⽒(元東北⼤学教授、都市デザイナー)が発案した造語で、仙台の都市構造を俯瞰し、奥⽻⼭脈に続く⼭⼿、市街地、太平洋に⾯する海⼿、の3つに区分したことに由来する。「⼤村先⽣は、震災前から荒井駅を⽞関⼝とした仙台海⼿リゾートエリアの構想をお持ちでした。震災によってまずは復興が最優先となりましたが、地下鉄東⻄線を活⽤して市内外から⼈を呼び、仙台海⼿エリアを回遊してもらうという次世代に向けたまちづくりの⽅針は2009年からすでに動き出していたんです」と榊原さん。
その後、被災した仙台東部沿岸部エリアの復興がハード⾯で節⽬を迎えた2019年に、仙台海⼿ネットワークは発⾜した。「海岸公園や農業園芸センターなどの再開や荒浜⼩学校やメモリアル交流館など施設が次々とオープンする中で、それぞれの施設運営者から誘客したいという話を伺っていたので、施設単独で誘客するのではなく、みんなで連携してやっていく必要性を感じ、⽣まれたのが仙台海⼿ネットワークです」。
互いに⼒を合わせることで
実現できる取り組み
発⾜当初は、海岸公園の指定管理者やせんだい農業園芸センター、せんだい3.11メモリアル交流館、震災遺構仙台市⽴荒浜⼩学校の施設管理運営者や仙台市担当者などで構成されていた仙台海⼿ネットワーク。定期的に情報交換を⾏いながら、各施設にパンフレットを設置し、互いに誘客・送客し合う関係を築くところからスタートした。施設を巡るスタンプラリーなどを実施していくうち、参加者は徐々に拡⼤。名取市のかわまちてらす閖上や仙台うみの杜⽔族館、三井アウトレットパーク仙台港などの⼤型施設なども参加するようになり、その輪は今なお拡がっている。
「仙台海⼿ネットワークは、各施設の結びつきを強めるプラットフォーム的な存在」と榊原さんが話すとおり、⼀⺠間企業だけでは実現が難しいことも、仙台海⼿ネットワークというプラットフォームをうまく使えば可能になる。例えば、荒井駅から各施設への交通⼿段が乏しいことが共通の課題として話し合われていたところ、荒井駅発着で主要な観光スポットを周遊できる『せんだい海⼿線ループバス』の期間限定での運⾏も、⾏政の協⼒があってこそ実現したことだ。活動が展開する⼀⽅で、地域にはさまざまな考えを持った⼈がいることも理解している。「地元の⽅の中には、外から⼈を呼ぶことに対して慎重な⽅もいます。そういった考えがあることを認識した上で、できることに取り組んでいきたいと思っています」と話す。
何度でも訪れたくなる
魅⼒あるエリアを⽬指して
「『仙台海⼿』が今よりもっと周知され、⼀般名詞みたいになるといいなと思っています」と榊原さん。理想は、観光客が年に1回訪れるだけではなく、仙台市⺠が⽇常的に、気軽に⾜を運んでもらえるようなエリアになること。エリア内にはグラウンドやパークゴルフ、冒険遊び場などを有する海岸公園や、かわまちてらす閖上、アクアイグニス仙台、JRフルーツパーク仙台あらはまなど、あらゆる世代が楽しめるスポットが満載。⼀⽇かけて複数のスポットを回遊したり、週末ごとに違う場所を訪れてみたり、海岸でただボーッとしてみたり、まだ知らない仙台海⼿の魅⼒をもっと多くの⼈に体感してもらいたいと考えている。そのためには、荒井駅からの⼆次交通を整える必要がある。例えば現在、仙台コミュニティサイクル「DATE BIKE」のシステムを活⽤した「海⼿サイクル」が提供されているが、今後はキックボードなど多様なモビリティを充実させることで、各スポットへのアクセスは⼀段と快適になる。
「思いを持っている⼈たちが集まって、それぞれができることを、それぞれの得意分野やリソースを使ってやっていくのが仙台海⼿ネットワークです。⾃主的に動く⼈が本当に多いので、事務局なんていらないくらい(笑)。そして参画するみんなが『いいね』と賛同してくれるから、どんどん活動が拡がっていくんです。これからも発信を続け、仙台海⼿も含めて『杜の都・仙台』の魅⼒なのだと市⺠の皆さんに知っていただき、誘客と回遊につなげたいです」。
さまざまな困難や課題を乗り越え、何度でも訪れたくなるリゾートエリアを⽬指す仙台海⼿。その発信のプラットフォームとして、仙台海⼿ネットワークは今後も歩み続けていく。
仙台海手ネットワーク事務局長
(一社)荒井タウンマネジメント 理事・事務局長
榊原 進さん
静岡県焼津市⽣まれ、東北⼤学で都市・建築学を学ぶ。特定⾮営利活動法⼈都市デザインワークスを2002年に設⽴し、市⺠主体のまちづくりを実践・⽀援している。震災後は被災エリアの復興まちづくり計画の策定も⽀援。荒井東⼟地区画整理事業をきっかけに、荒井タウンマネジメントの設⽴にも携わる。
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