Special 特集

つながりから⽣まれる、
集いの海辺未来へつなぐ、ひと。

愛犬を通じて 互いに笑顔を交わし合う コミュニティーを創出
ガモウパーク 海の近くのドッグラン 会長 橋本 裕さん
Interview

かつて居久根(いぐね)と呼ばれる屋敷林に囲まれた集落があり、古くから続く農家が豊かな田園風景を支えてきた南蒲生地区。4mを超える震災津波が何もかも奪ったこの地に2020年6月、全天候型のドッグランやドッグプールなどを備えた「ガモウパーク 海の近くのドッグラン」がオープンしました。毎日、朝早くから愛犬を伴った利用客が集い、新たな社交の場になっています。

充実の設備と広大なスケールを誇る
東北最大級のドッグラン

仙台市海岸公園のすぐそばにあり、浜辺から届く爽やかな潮風に包まれる絶好のロケーションで、約7,500㎡もの広大な敷地に展開する「ガモウパーク 海の近くのドッグラン」。約600㎡の全天候型ドッグランと約3,000㎡の天然芝ドッグランをメインに、飼い犬と一緒に楽しめるカフェやプロのトリミングが利用できる施設棟、ドッグプールや多目的レンタルルームなどを備え、その規模や充実した機能が大いに評判となり、県内外からたくさんの愛犬家を集めている。

このパークを運営するのは、建設機械修理・販売の株式会社橋本建機。現在は会長職に就く
橋本裕さんが代表取締役を退くタイミングで、仙台市の防災集団移転跡地利活用事業に応募。子どもの頃から動物好きだったという橋本さんが自身の夢を叶えるため、ドッグラン建設の計画を立ち上げた。

「いつかドッグランを造りたいという願望を持っていて、そのためにはある程度広い土地の取得が必要だと考えていました。仙台市の防災集団移転跡地利活用事業に係る事業者募集は、まさに実現のチャンスだと思い、事業計画書を作成しました。南蒲生地区で一番広い土地を志望したので、もしかしたら採用されないのではと心配しましたが、プランが認められたので、本当にうれしかったですね。」

オープンは、コロナ禍で世の中が停滞している真っ只中。営業開始を2カ月ずらし、さらに3カ月無料開放して様子を見ることにした。想定に反して県外からも利用者が訪れるようになり、次第に客足も伸びていった。「利用された方がSNSで発信してくれたおかげで、遠方の方にも施設の魅力が伝わったようです。現在は、関東圏や九州、四国から旅行がてら立ち寄ってくれる利用者も増えています」と、橋本さんが顔をほころばせながら語ってくれた。

犬を愛する気持ちを
共有する場所に

2匹の柴犬をこよなく愛する橋本さんの視線は、このパークの隅々まで行き渡っている。建物とドッグランを結ぶ通路は遮熱舗装を施してあり、炎天下でも犬の足が火傷をしない配慮がなされている。また、飼い犬を気軽にシャンプーできるスペースや、衣服に毛がついても気兼ねなく洗濯ができるコインランドリーを設置するなど、愛犬家だからこその気づきや発想が活かされている。「このパークを建設する前に、全国10カ所以上のドッグランを視察してきました。犬を飼っている人が求めるものは何か、ヒアリングを行ったり自分にも問いかけたりして、設備面の充実を図りました。」

橋本さんが、特に強いこだわりを見せているのが、屋外ドッグランに敷かれた天然芝。最近は住宅事情などもあって、犬を室内飼いしている家庭が増えている。この状況を鑑みて、このパークのドッグランで思い切り遊んでも、自宅に帰った時に汚れを家中に持ち込まないようにするため、テントドーム以外のドッグランの全面に天然芝を敷き詰めている。「とにかくどこを見ても清潔な施設であることを心がけています。このパークで遊んだ飼い犬が土や泥で家を汚し、利用者を不快な気持ちにさせないことが第一。でも、天然芝は劣化したり枯れてしまったりすることもあるので、いつか張り替え用の芝生を養生させるための土地を近隣で確保できればと思っています。」

ドッグランは、小型犬・中型犬・大型犬のサイズごとにエリア分けをしているが、1カ所だけフリーエリアを設けており、実はこのパークで最も賑わいを見せる場所になっているという。「このパークが、飼い犬の遊び場だけでなく、飼い主同士が交流を深めるコミュニティーとしても機能しているようです。常連の利用者同士で楽しく会話したり互いを気遣っていたりする光景をよく目にしています。震災という悲しい出来事があった地ですが、愛犬を通じてたくさんの人が集う場所になって、大きな成果を感じています」と、思いがけない効果に喜んでいた。

地域の中で結びつきを強め
南蒲生地区に新たな賑わいを

宮城県解体工事業共同組合の監事も務める橋本さんは、震災発生の翌日から地元の建設業者とともに、仙台市東部沿岸地域で緊急車両が通行できるよう道路啓開に当たった。連日、過酷な作業が続き、瓦礫が積み重なる中に遺体を発見することも。消防団員でさえも目を背ける凄惨な光景を何度も目の当たりにしてきた。だからこそ、南蒲生地区に再び人々の賑わいを取り戻す未来を切に願い、地域の活性化に力を尽くしている。「仙台市の防災集団移転跡地利活用事業により様々な店舗や施設ができましたが、事業者同士のつながりがいまだ希薄なままなのが残念に思っています。同じ地域で商売に携わる者同士、互いの利益向上を目指しながら、それぞれにメリットが生まれる方向に進んでいければと考えています。防災集団移転跡地利活用事業者による盛んな交流を目的とした協議会が発足し、副会長に任命されました。その使命と責任を果たすため、何がベストな方策なのかを模索していければと思っています」と橋本さんは展望を語ってくれた。

ガモウパーク
海の近くのドッグラン 会長
橋本 裕さん

茨城県勝田市(現:ひたちなか市)生まれ。建設機械の整備業に従事した後、仙台市の建設系の商社に勤務。1976年に個人営業として橋本建機を設立。1984年、有限会社橋本建機を創立登記。現在は代表取締役会長を務め、2020年6月にオープンした「ガモウパーク 海の近くのドッグラン」の運営にも携わる。また、宮城県解体工事業共同組合の監事も務め、震災直後の道路啓開などにも尽力した。

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